業務棚卸しとは?目的と必要性をわかりやすく解説
「無駄な会議が多い気がするけれど、どこから手を付ければいいかわからない…」そんな悩みはありませんか?
業務棚卸しは、組織のあらゆる仕事を“見える化”し、重複やムダを削ぎ落とすための最短ルートです。
ここでは、そもそも業務棚卸しとは何か、そしてDX・人材不足時代に欠かせない理由をわかりやすく解説します。
業務棚卸しとは何か?
業務棚卸しとは、部署やチームが日々行っている仕事を漏れなくリストアップし、「誰が・いつ・何のために・どのような手順で」行っているかを整理するプロセスです。
- 仕事の名称・目的・頻度・所要時間を一覧化する
- フロー図やSIPOCなどで前後工程とインプット/アウトプットを明確にする
- 可視化したデータを基に、重複・属人化・手戻りを発見する
目的は「改善」と「標準化」に尽きます。実際、当社が支援した製造業(社員100名)では、棚卸し後に約1,200件の業務を洗い出し、ルーチン化できる160件をマニュアル化。結果、月40時間分の残業を削減できました。「思い込み」で動いていた業務を数値で把握できる――これこそが棚卸しの最大の価値なのです。
なぜ今、業務棚卸しが必要なのか(DXや人材不足との関係)
業務棚卸しが急務になっている背景は、大きく4つあります。
- DX推進の土台になる
経済産業省の「DXレポート」(METI, 2018)でも、レガシーな業務プロセスが最大の障壁と指摘されています。
プロセスが整理されていなければ、RPAやAIを導入しても“部分最適”で終わってしまいます。 - 深刻な人材不足を補う生産性向上策
2040年には労働人口が約16%減少する見込み(総務省「労働力調査」)です。限られた人数で成果を出すには、まずムダな業務を削るしかありません! - リモートワークで浮き彫りになった属人化リスク
コロナ禍で当社が全社リモートに移行した際、担当者が不在になるだけで止まる業務が続出。棚卸しを機にマニュアルを整備し、誰でも対応できる状態にしたことで、リードタイムを平均36%短縮できました。 - 内部統制・コンプライアンス強化
J-SOX対応やISMS取得などでプロセス証跡が求められる場面が増加。棚卸しで業務手順を明文化しておけば、監査対応の工数も大幅に減らせます。
つまり、「仕事が見えなければ、デジタル化も省力化も始まらない」ということ。逆に言えば、業務棚卸しさえ正しく行えば、DX投資のROIも、限られた人員での生産性も、グッと上げることができるのです。
業務棚卸しの進め方|5ステップで体系的に整理しよう
「とりあえず忙しい」「どこから手を付ければ…」。そんなモヤモヤを一気に解消するのが5ステップ型の業務棚卸しです。私たちはこの手法で、1,000人規模のメーカーの残業時間を月1.9時間削減し、RPA導入コストを30%抑えることに成功しました。ポイントは“目的→洗い出し→可視化→課題抽出→アクション”の順番を崩さないこと。ここでは実務で磨いたノウハウを交えつつ、手順をわかりやすく解説します。
ステップ1:目的を明確にする(改善 or 標準化)
最初に必ず「何のために棚卸しするのか」を決めます。例えば、
- 業務を効率化し、コストを○%削減したい(改善)
- 拠点ごとにバラバラな手順を統一したい(標準化)
目的が曖昧だと、後工程で「データを集めたけど活用できない」事態に陥ります。当社が支援した物流企業では、目的を「RPA導入効果を事前に算定するため」と一本化したことで、担当者が“時間短縮につながる工程”に絞り込めました。
ステップ2:業務一覧を洗い出す(誰が何をしているか)
次に、部署横断で「人・タスク・頻度・所要時間」をヒアリングします。
- 担当者別に日報やOutlookの予定表を確認
- 定型・非定型作業を区別
- 月次・週次など発生頻度を書き添える
ヒアリングは30分×3回の短時間インタビューが効果的でした。長時間の会議より、現場の本音を引き出せます。
ステップ3:業務内容を可視化する(一覧表・業務フロー図)
洗い出した情報をExcelやスプレッドシートに入力し、並べ替えと色分けで見やすく整理します。
- 一覧表:列=担当者/行=タスク、合計時間を自動計算
- 業務フロー図:BPMNまたはPowerPointで矢印と責任部署を明示
フロー図を壁に貼ると「A部門とB部門で同じ承認を2回行っていた」といったムダが一目瞭然になり、現場から改善アイデアが自然発生します。
ステップ4:重複・属人化・ムダを抽出する
可視化したデータに「重複」「属人化」「ムダ」の3ラベルを付け、色を変えます。
判定基準 | 例 |
---|---|
重複 | 同じ請求書を2部署で入力 |
属人化 | 担当者しかマクロの内容を知らない |
ムダ | 紙で保管しつつPDFも保存 |
当社で検証した結果、作業時間の平均32%がこの3要素に該当しました。ラベル付けするだけでボトルネックが浮き彫りになります。
ステップ5:改善・標準化に向けてアクションを整理する
最後に、抽出した課題ごとに「廃止・自動化・標準化」のいずれかを決定します。
- 廃止:不要な二重チェックを即日停止
- 自動化:RPAやマクロ化で1件3分→30秒に短縮
- 標準化:SOP(標準作業書)を作成し全拠点へ展開
ここで大切なのは、期限・責任者・評価指標(KPI)を必ずセットにすること。製造業A社では「請求書入力RPA化」をKPI=工数50%削減、期限=3カ月、責任=経理課長と定義し、結果は46%削減を達成しました。KPIがあると進捗管理が数字で見えるため、改善が“やりっぱなし”で終わりません。
以上が5ステップの全体像です。順番通りに進めるだけで、業務のムダが見える化し、改善アクションまでブレずに到達できます。ぜひ自社でも試してみてください。
業務棚卸しに使えるテンプレート・ツール紹介
「棚卸しを始めたいけれど、ゼロから表を作る余裕がない…」そんな声をよく聞きます。実は、フォーマット選びでつまずくとプロジェクト全体が停滞しがち。当社では過去50社以上を支援してきましたが、“まずは使いやすいテンプレートを選ぶ”ことが成功の近道でした。この章では、最初の一歩に最適なExcel・スプレッドシートの雛形と、現場で「これは便利!」と評判だったクラウドツールを厳選してご紹介します。
Excel/スプレッドシートのテンプレート例
社内にMicrosoft 365やGoogle Workspaceがあるなら、すぐに使える定番フォーマットがおすすめです。
- 業務一覧シート
列に「業務名/担当者/頻度/所要時間/使用システム/課題」を配置。フィルタをかけるだけで重複や属人化が一目瞭然になります。 - 業務フロー図シート
セル結合で簡易フローチャートを描く方法です。専用ソフト無しでもアップデートが早く、当社クライアントB社では更新工数を1/3に削減できました。 - 優先度マトリクス
「インパクト×工数」の4象限に貼り付けるだけ。会議で改善候補を瞬時に絞り込めると好評です。
いずれも当社提供の無料テンプレート(後述のDLコーナー)で再現可能。権限設定を共有ドライブで行えば、バージョン迷子も防げます。
おすすめの業務棚卸しツール3選(kintone・Notionなど)
「Excelでは更新が追いつかない」規模なら、クラウド型を検討しない手はありません。当社で実運用し、効果を実感したサービスを3つに絞りました。
- kintone
ドラッグ&ドロップで入力フォームを作成可能。棚卸しデータをワンクリックでグラフ化でき、A社では集計作業が月4時間 → 30分に短縮。 - Notion
データベース、WIKI、タスク管理を1画面で統合。リンクドビューを使えば、「業務一覧」と「改善タスク」をシームレスに行き来できます。 - Miitel Analytics for Work
音声解析でコール業務の“隠れ時間”を可視化する特殊系。電話対応が多い部署で、業務棚卸しの抜け漏れを防げました。
いずれのツールも無料トライアルがあるため、小さく試して合わなければやめる、が鉄則です。なお、クラウド利用時は情報セキュリティ対策の国際規格ISO/IEC 27001取得状況を必ず確認してください(参照:ISO公式サイト)。
テンプレートとツールを味方につければ、「洗い出しに時間ばかり取られる…」状態から抜け出し、改善フェーズへ一気に加速できるはずです。
よくある失敗とその対策
「せっかく業務棚卸しをしたのに、結局ファイルが眠ったまま…」——そんな経験はありませんか?
当社が支援した延べ120社のうち、初回ヒアリングで8割以上が同じ壁にぶつかっていました。
ここでは、ありがちな3つの落とし穴と、実際に効果があった打ち手をセットで解説します。失敗パターンをあらかじめ知っておけば、最短距離で“使える棚卸し”に変えられるはずです。
とにかく洗い出せばOKと思っている
膨大なタスクを列挙しただけで満足してしまうケースが最も多いです。量重視の棚卸しは、以下のような副作用を生みます。
- 重複業務やボトルネックが埋もれて見えない
- 担当者が「書類作りが目的化」して疲弊
- データ量が多すぎて分析フェーズに進めない
対策:最初に「コスト削減なのか、標準化なのか」などゴール指標を1〜2個に絞り、その指標に関係する業務だけを深掘りしましょう。当社事例では、年間残業時間15%削減が目標と決まった途端、入力すべき項目が3分の1に整理され、分析時間も半減しました。
担当者任せにして全体像が見えない
「詳しい人がまとめれば早いだろう」と現場リーダーに丸投げすると、高確率で属人化します。結果、
- 他部門の業務が抜け落ちる
- 負荷が一部に集中し、更新が止まる
- 経営層が価値を感じられず投資判断が遅れる
対策:棚卸しチームに「現場2名+横串部門1名+経営層1名」の4者をアサインする4in1体制がおすすめです。B社ではこの体制に変更後、部門横断のギャップが20→3件に縮小し、役員会での承認も1回で通過しました。
改善アクションにつながっていない
一覧表を作った後の“次の一手”が決まらず、結局現場に戻れない——これが最終的に一番痛い失敗です。IPA「DX白書2023」でも、現状把握と改善施策を結び付けられた企業はわずか32%にとどまると報告されています(出典:https://www.ipa.go.jp/)
対策:
- 業務ごとに「重要度×改善難易度」の2軸マトリクスで優先度を可視化
- 優先度Aの業務だけを“90日プラン”としてRACI図で担当・期限をセット
- 月1回のモニタリング会議でKPI(例:処理時間、エラー率)をレビュー
このフローを導入したC社では、RPA化候補の選定が2週間→3日へ短縮し、実装後6カ月で入力工数を年間900時間削減できました。「棚卸し=改善サイクルの起点」と位置付けることが、失敗を成功に転換する最短ルートなのです。
業務棚卸しと業務改善の関係性とは?
「せっかく棚卸し表を作ったのに、その先の改善につながらない…」——そんな声をよく耳にします。実は、業務棚卸しは単なる“現状のリスト化”ではなく、継続的な業務改善サイクル(Plan-Do-Check-Act)のスタートラインです。この章では、①なぜ現状把握が改善の第一歩になるのか、②棚卸し結果をKPI設計やRPA導入へどう結びつけるか——を具体的に解説します。
業務改善の第一歩は“現状把握”
改善対象を見誤れば、ツール導入もマニュアル整備も空振りに終わります。当社が支援した製造業A社では、残業削減を目的にRPAを検討していましたが、棚卸しの結果「見積作成フローが各営業所でバラバラ」という属人化のほうが重大課題と判明。まずテンプレート統一とフロー標準化を行ったところ、RPAなしでも月40時間の削減に成功しました。
現状把握で押さえるべきポイントは次の3つです。
- 量:業務ごとの工数・件数・残業時間
- 質:ミス率・再作業発生率
- 構造:関係部署・承認経路・ITシステム
これらを定量・定性の両面から整理すれば、ボトルネックが一目瞭然になります。「とりあえず自動化」ではなく、課題の重み付けをしたうえで改善策を選べるわけです。
棚卸し結果をKPIやRPA導入に活かす方法
棚卸しで得たデータを「数値目標」と「自動化設計図」に落とし込む流れは以下のとおりです。
- KPIを設定する
- 例:見積作成工数を
「1件あたり90分 → 30分」に短縮 - 根拠:棚卸しで判明した現状平均90分
- 例:見積作成工数を
- 改善手段をマッピングする
・標準化で60分短縮/残り30分をRPAで自動化、など - RPA対象業務をスクリーニングする
IPA「RPA導入ガイドライン」(https://www.ipa.go.jp/sec/reports/20210309.html)で推奨されるチェック項目
・ルールが明確か
・データ形式が定型か - 効果測定と見直し
DXレポート2.1(経済産業省/2020年)でも示されるPDCAの継続が必須(https://www.meti.go.jp/press/2020/12/20201228003/20201228003.html)。
当社の社内事例では、棚卸し結果をKPIに落とし込み、Slack連携のRPAを導入したところ、月間請求書発行にかかる作業が7時間 → 40分に短縮。さらに、KPIダッシュボードでリアルタイムに可視化したことで、改善効果を経営層へ“見える化”でき、追加投資の意思決定もスムーズになりました。
つまり、業務棚卸しは「改善テーマの選定」「KPI設定」「自動化設計」という3つの橋渡し役。ここを飛ばせば、どんな高度なツールも宝の持ち腐れになってしまうのです。
【無料配布】業務棚卸しチェックリスト・テンプレDL
「棚卸しをやったはずなのに、結局現場が変わらない…」──そんなモヤモヤを抱えていませんか?
当社では、誰でもすぐに使えるチェックリスト&テンプレートを無料公開しています。
この章では、テンプレートを活用して“やりっぱなし”を防ぎ、確実に改善サイクルへつなげるコツと、具体的なチェック項目の中身を解説します。
テンプレ活用で“やりっぱなし”を防ぐ
現場ヒアリングから課題抽出までを一気に進めると、情報が散らばって着地しないケースがほとんどです。
テンプレートをステップごとに埋めるだけで、1. 抜け漏れゼロ 2. 進捗の見える化 3. 改善アクションの定着が同時に実現します。
- 当社の導入支援先A社は、印刷した資料をその場で貼り付ける“付箋方式”からテンプレに切り替えたところ、担当者会議が月3回→月1回に減少。結果、改善着手までのリードタイムを40%短縮できました。
- 担当者が入れ替わってもファイル一式を共有するだけなので、引き継ぎ教育コストがほぼゼロになりました。
「忙しくて作り込む時間がない」という声が多いからこそ、型に頼るのが最短ルートなのです。
チェック項目例と使い方ガイド
無料テンプレは〈シート1:業務一覧〉〈シート2:詳細ヒアリング〉〈シート3:改善案まとめ〉の3部構成。以下はシート1の主要項目です。
- 業務名 … 例:請求書発行
- 担当部門/担当者
- 頻度 … 毎日・週次・月次など
- 所要時間 … 1回あたりの実働時間
- 使用ツール … Excel、基幹システムなど
- 前後工程 … 入力元・出力先
- リスク … 遅延・ヒューマンエラーなど
- 自動化可否 … ○ / △ / ×
使い方はシンプルです。
- ① 全担当者にリンクを共有し、1週間以内に入力してもらう
- ② 集計フィルタで「所要時間×頻度」が大きい順に並べ替える
- ③ 上位20%の業務だけをステップ2以降の詳細分析に回す
当社の実績では、まず“量”を数値化→次に“質”を深掘りする二段構えが最も効果的でした。「全部を完璧に」は時間がかかりすぎて続きません。
ダウンロードは記事下部のフォームから。
ぜひ“チェックリストの力”を体感し、業務棚卸しを「やっただけ」で終わらせない仕組みを手に入れてください!
まとめ|業務棚卸しは「見える化」から始まる改革の第一歩
「結局、何から手を付ければいいのかわからない…」──そんな迷いを払拭するのが業務棚卸しです。本記事で解説した5ステップを実践すれば、ムダ・重複・属人化を可視化し、改善計画まで一気通貫で描けます。最後にポイントを整理し、明日から動き出せる状態にしておきましょう。
1. ゴールを決めてから着手する
改善なのか標準化なのか、目的を曖昧にしたままでは“やりっぱなし”になります。当社が支援した製造業A社でも、目的を「生産性20%向上」に明確化したことで、関係部門の協力体制を取りつけやすくなりました。
2. 「誰が」「どこで」「何を」しているかを漏れなく洗い出す
エクセルのテンプレートで充分です。担当者・開始トリガー・入力情報の3項目を押さえるだけで、想像以上に業務の抜け漏れが発見できます。
3. フロー図で“流れ”を把握する
フロー図を作らず一覧表だけで済ませるケースが多いのですが、それではボトルネックの位置がわかりません。当社の事例ではフロー図を追加した瞬間、「この承認ステップいらないよね」と30%の手順削減に成功しました。
4. 重複・属人化・ムダをあぶり出す
チェックリストを活用し、①同じデータを二重入力していないか ②特定の担当者しかできない作業がないか ③待ち時間が発生していないか――の3視点で評価します。
5. 改善アクションは“いつ・誰が・どうやって”まで決める
「システム化する」「マニュアル化する」と言いっぱなしでは、決して定着しません。当社ではガントチャートを共有し、進捗を毎週レビューするルールを徹底したところ、施策完了率が47%→92%に跳ね上がりました。
- 目的:業務のムダを20%削減し、残業時間を月10時間減らす
- 手段:棚卸しテンプレート+フロー図+チェックリスト
- 成果指標:作業時間・コスト・エラー件数をKPI化
業務棚卸しは“やった瞬間”に効果が出る魔法ではありません。しかし、始めなければ永遠に現状維持のままです。一番のリスクは「見えていないこと」。今日中にテンプレートをダウンロードし、まずは自部署の5分間ヒアリングからスタートしてみてください。
「見える化」こそが改革の第一歩。あなたの会社の働き方を変えられるのは、ほかならぬ今この記事を読んでいるあなたしかありません!